Pratibhanusarini --- 九州インド哲学ブログ2

On Indian Philosophy and Buddhist Studies

フラウワルナーの『仏教哲学』

オリジナルのドイツ語版は初版が1956年

そして,2010年,ようやく英訳が出版されました.

英訳版の「はしがき」をシュタインケルナー教授が書いています.

そこで簡単に触れられているのは,フラウワルナーとナチの関係の問題です.

どうして,フラウワルナーほどの大学者が,「血統」などという馬鹿げた概念を使ってインド哲学史を眺めたのか.

さらに,どうして,その悪影響が,この『仏教哲学』には見られないのか.

答えは簡単,とシュタインケルナー教授.

要するに,でっかいことを言うときは時局に影響された馬鹿げた概念を使ったが,一次資料に基づいた個別の厳密な研究においては,その悪影響はなかった,ということです.

While in the distinct individual results of his philological and interpretational work Frauwallner produced untainted presentations of the sources, it was when he ventured into the wide-ranging comprehensive historical summary of the cultural phenomenon of Indian philosophical thought and its development that he fell back on such meta-conceptions from his socio-political environment and his own convictions. (Preface to Erich Frauwallner's The Philosophy of Buddhism (Die Philosophie des Buddhismus), Translated by Gelong Lodrö Sangpo with the assistance of Jigme Sheldrön under the supervision of Professor Ernst Steinkellner. Delhi: Motilal Banarsidass Publishers, p. xvi.)



時代の要請に応えたり,時局に応じてでっかい事を言うのは,その場は人目を引くでしょうし,貢献もしているように感じるものですが,結局,すぐに古びて時代遅れになるだけでなく,後々は明らかに間違いとして批判されることになります.

ある特定の時代に属す以上,時代を超えた普遍的な視野など個人は持ち得ないでしょうが,その中でも時代を超えて残るものは,やはり,一次資料に基づいた堅実な研究ということになります.

フラウワルナーの生涯についても,シュタインケルナー教授が簡単に触れています.

1898年12月28日生まれ

現代の,特にヨーロッパのサンスクリット学者には多いケースですが,フラウワルナーの場合も,最初はギリシャ・ラテンの古典学からです.

1922年からウィーンの中等学校で古典語を教えていたとのこと.

凄いのは,インド学・インド哲学に関して特に師匠がいないことです.

独学です.古典学のメソッドの凄みが分かります.

ついでに,チベット語も,(後々習得する)漢文も日本語も独学です.

三島も理解不能な宇井の著作を,フラウワルナーは独学で読んでいたのでしょう.全く驚きです.

1928年には,インド学の教授資格を獲得.

1939年にはインド・イラン学の教授に任命.

1945年6月6日に政治的関与のかどで大学から解雇.

1948年終わりには早期退職.中等学校の年金だけ.

この時代が一番苦しかったようです.

ただの在野の研究者でほぼ無収入,そして,妻と三人の子供.

この時に『インド哲学史』第一巻に注力.

1952年,ウィーン大学に復帰.

1955年に教授任命.

1960年3月21日に,創設されたインド学研究所の教授に任命.

1963年に退職.

1974年7月5日没.

年齢で見ると,50歳あたりでリストラ・無収入ということになります.

一番苦しい時ほど逆に凄みのある研究が生まれる,という一例です.

『織田仏教大辞典』の織田得能を思い出しました.

Frauwallner5

写真は,ウィーン大学の壁に掛けてあった写真を撮影したもの.
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  1. 2010/12/05(日) 08:36:23|
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