Pratibhanusarini --- 九州インド哲学ブログ2

On Indian Philosophy and Buddhist Studies

新刊:水島司『インド・から』

インド・から

インドに実際に暮らしてみると,とにかくも,理由のわからないこと,背景の不明なことが多すぎます.

周囲の人に聞いても関心がないか,知らないか,いずれかでしょう.

その一つ一つについて調べようと思うと,日本事情についてだとありそうな便利なガイド本も研究書も当然ありません.

つまり,疑問の一つ一つが,結局,自分で一次資料から歴史をひも解いて丁寧に調べざるを得ないというようなことになります.

専門外の人には到底不可能ということです.

さらに悪いことに,日本語の旅行ガイド本は,歴史・文化にあまりこだわらない,という事情があります.

ディテールが薄っぺら過ぎるのです.

読者もそこまで求めていないのでしょう.

歴史的経緯も神話も,インド人ガイドが知っていそうな通り一遍の知識だけで,突っ込んだ情報は何も提供してくれません.(つまらない情報だけは,結構,オタク的に突っ込んでいたりするのですが.)

現地に行っても,既に頭に情報がインプットされている専門家でもない限り,結局,見ただけで何も背景について学べない,ということになります.

そうしたイライラ感は日本語で書かれた薄っぺらなインド本を読むたびに,つきまとってきたものです.




タイトルからして軽いエッセイを予感させる水島先生の本.

颯爽とカッコ良い先生のことです.

個人的な思い出とか,インドでの笑える苦労話とかが,洒脱に書かれているものと期待して読み始めました.

しかし,軽いどころか,これまでの長い調査に裏打ちされた確実な情報に満ち満ちた本でした.

インド情報に関しては,「確実」ということはなかなか難しいのですが,さすが歴史家,一つ一つが丁寧に検討されています.

一つ一つの現代の事象について,的確に背景を説明し,歴史的事情を遡って解明してくれています.

軽い旅行記かと思って読み始めたら,その落差に驚くでしょう.

歴史家の凄さを思い知らされました.

現代の状況について,これほどクリアーに説明してくれるガイド本は初めてです.

そして写真の豊富さ.

主な舞台が南インドということもあり,私も,いろいろと見知った風景もあります.

ロックフォートのティルッチー,

あのタミルの田舎都市の背景に,こんなにも様々な事情があり,歴史の堆積があるのかと,目を見開かせられました.

さらにインド文化の伝播ということで,東南アジアまで話は広がっていきます.

インド社会相手にこのように根の張った頑丈な考察をするには,相当の労力が必要なことでしょう.

村民へのインタヴュー,土地台帳の検討など,水島先生の話の端々からも,背後にある丹念な仕事がうかがえます.

そんな苦労はみじんも感じさせない筆致の軽さは流石です.

自分が知りたいと思ったことは,結局,(汗をかいて)自分で調べるしかない,ということを改めて確認させられました.

インドについて,いろいろと断片的にあった情報を一気につなげてくれます.

山川出版のメジャーな出版の割に2800円は高いように思われましたが,しかし,写真だけでも十分にその価値ありです.

ちょうど,最近あった研究会で,郊外型の学校が増えている,あるいは成立することについて疑問に思っていたところなのですが,その解も,さらっと,見事に与えてくれていました(126頁).

いやはや,凄い本です.
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  1. 2010/12/14(火) 18:54:08|
  2. 未分類

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