Pratibhanusarini --- 九州インド哲学ブログ2

On Indian Philosophy and Buddhist Studies

インド思想史学会第十九回学術大会(2012・12・22)

IndoShisoshiGakkai 004

サンスクリット学者の年末恒例行事である京都のインド思想史学会.

毎年クリスマス前後の土曜日に行われます.

が,来年は,はじめて,東京開催となるそうです.

2013年12月21日(土曜日) 東京大学 

今年も,例年と同じく,インド学の多彩な分野から,多くの若手が発表していました.

トップバッターのビル・マックさんは,結構なインパクトのある発表.

ピングレーの『ヤヴァナジャータカ』の間違いを指摘するもの.

丁寧に検討し直すと,インド天文学の碩学ピングレーの解釈には様々な不備が.

「滴」(bindu)という語がゼロを表すという最古の用例として扱われてきたものが,実は,テクストには支持されないということ,また,数を様々なものを使って表すというbhūtasaṃkhyāというシステムが,『ヤヴァナ・ジャータカ』には未だ見られないということ.

驚きです.

大学者ピングレーの言っていることだから大丈夫だろう,と思っていたら大間違い,ということでした.

ともあれ,一次資料を,新たに入手できた写本資料を使って再検討することの重要性を再確認させられた発表でした.

司会の矢野先生(ピングレーの弟子)も,「先生の間違い,認めたくないけど,しゃーないなー」という感じのようでした.

というわけで,数字の記号としてのゼロのもっとも古い証拠は,これ以外に探さねばならない,ということになりました.

次が川尻さんのシャイヴァの発表.

前に座った梶原さんから「片岡さんが司会らしいですよ」と,その場で聞かされて,確かに,誰も司会席にいなくなったので,司会席へと.

ここらへんは,ほのぼの運営です.

現在,写本のマージンから,散逸したIPTの本文回収という画期的な作業を進めている川尻さん.

今回は,ソーマ・アーナンダからウトパラ・デーヴァ,そして,アビナヴァグプタへのシヴァ教一元論の流れについて,対論者への態度の違いという点からの報告でした.

やはり,まだまだ会場の人にはなじみがない分野なので,質問も最初は出ず,呼び水的に司会者である私が,あれこれと質問.

IPK,IPKV,IPT,IPV,IPVVと,似たようなタイトルの著作があるので,慣れない人には,どの著作のことなのかピンと来ないので,質問しにくかったのかもしれません.

Somānanda: Śivadṛṣṭi
Utpaladeva: Śivadṛṣṭi-vivṛti

Utpaladeva: Īśvarapratyabhijñā-kārikā + Īśvarapratyabhijñā-kārikā-vṛtti
Abhinavagupta: Īśvarapratyabhijñā-vimarśinī

Utpaladeva: Īśvarapratyabhijñā-ṭīkā (=Īśvarapratyabhijñā-vivṛti)
Abhinavagupta: Īśvarapratyabhijñā-vivṛti-vimarśinī

シヴァ教一元論の神学関係は,トレッラ教授の他,日本では川尻さん,それに,海外ではイザベル・ラティエ,ジョン・ネメジなど,若手が入ってきているので,まだまだ,これから盛り上がるでしょう.

CafeBiblioticHello1



次の発表は志田さん.

メインテクストは,クマーリラのSVおよび,スチャリタのSVKです.

「追い風」「順風」に相当するanuvataの問題を取り上げます.

問題は,SV「音常住論」章の118aの

nānuvātādibhis(追い風等によって……ない)

を,

nanu vātādibhis(【問】風等によって……ではないのか)

へと訂正できないか,というものです.

つまり,文字的には,āからaへの小さな訂正です.

この小さなエメンデーションのために,様々な状況証拠を挙げて,検討してきます.

もっとも大きな障害は,三人の註釈家がいずれも前者で読んでいることです.

三人の註釈家に抗して,志田さんは,独自の読みを,クマーリラのものとして読むことになります.

つまり,ジャヤミシュラの時点で既に読みが壊れていたことになります.

しかし,志田さんの主張を支持する状況証拠も,また,かなりあります.

まずは,SV内の論理展開.

さらには,anuvātaの実質的な内容.(どちらからどちらに吹くのが「順風」なのか.)

また,「など」が何をさすのか.

また,「追い風による促し」の「促し」の実質的な意味.(動き出させるの駆動なのか,既に動いている物を加速させるのか.)

また,クマーリラの他のanuvātaの用例では,「追い風」という実名詞では使われていません.

「風に沿って」というように,副詞的な用例が見られるだけです.

さらに,志田さんは,文法学や,古い用例に遡って,anuvātaの用例を回収して行きます.

āをaに訂正するというミクロな問題のために,ここまでマクロに話を広げるのも,面白い作業です.

ブレイクの後,後半は,ヴェーダ関係の尾園さん,天野さん,西村さん.

今年は,五人ではなく六人と発表者が多かったので,疲れました.

その後,楽友会館の一階に場所を移して懇親会.

乾杯は名誉会長の服部先生.

IndoShisoshiGakkai 007

今年は,明日にシンポジウムが控えていることもあり,みなさん,そそくさと退席.

岡崎さんも一次会でおとなしく帰っていき,きわめて平穏な会でした.
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  1. 2012/12/25(火) 08:18:20|
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