Pratibhanusarini --- 九州インド哲学ブログ2

On Indian Philosophy and Buddhist Studies

nañchedaḥ kartavyo na vā

室屋安孝
『ニヤーヤ・スートラ・タートパルヤ・ディーピカー』について
印仏研 62-1, 2013
pp. 288(241)-282(247)

いつもながら,完璧な職人仕事の論文で,いろいろと有益な情報満載です.

ajñātārthaprakāśa感,炸裂です.

気になったのは一点だけ.

p. 286
anyathā *dūṣaṇasyāśrayasyānir*deśe na tasyāvayavasyedaṃ dūṣaṇam iti saṃśayaprasaṅgāt.

*dūṣaṇasyāśraya-] Mss. ORIML, GOML; dūṣaṇāśraya ed.
*-deśe na] em., Ms. ORIML; deśena ed., Ms. GOML.



この二番目の訂正です.

エディションと室屋さん(YM)を比べると次の違い.(1番目については今は気にしないことにします.)

Ed: anyathā dūṣaṇāśrayasyānirdeśena tasyāvayavasyedaṃ dūṣaṇam iti saṃśayaprasaṅgāt.
YM: anyathā dūṣaṇasyāśrayasyānirdeśe na tasyāvayavasyedaṃ dūṣaṇam iti saṃśayaprasaṅgāt.

naを切り離すかどうか,という,部外者にはどうでもいいマイクロフィロロジー魂の訂正です.

わくわくします.

直訳すると次のような違いになるでしょうか.

1.さもないと,論難の的を示さないので,「あの支分についてこの論難がある」という[点について]疑惑があることになってしまうから.

2.さもないと[すなわち]論難の的を示さない場合,「あの支分のこれは論難ではない」という疑問があることになってしまうから.

āśrayaといっているのは,拠り所・場所,要するに,扱っている当の対象,議論の的のことです.āspadaとも言われます.「何について」の「何」にあたるものです.

NBh 317.1--2 (VN: 52.9--10): apratyuccārayan kimāśrayaṃ parapakṣapratiṣedhaṃ kuryād iti.「再説しないと,彼は,何について,他者主張否定を,しているのか」.

というのを参考にすると,何についての論難なのかが分からないという文脈にあることが分かります.

つまり,「Aについての論難なのか,あるいは,Aについてでないのか」ということが分からない,ということです.

太郎の主張にたいして,批判者である花子が,例えばその理由について不備があるというように批判する場合,花子は,理由についての論難である旨を明らかにしてしてから,つまり,論点を明らかにしてから,批判します.

つまり,「これについては」と論点を最初に明示します.

「太郎の理由について,次の論難がある」というわけです.

太郎の主張の全部を繰り返しはしませんが,その理由については繰り返す必要があるということです.

太郎の支分について再説しない場合には,何について論難を行っているのかが,明らかでなくなってしまい,疑惑が生じるというわけです.

色々と考慮すべき点はありますが,校訂本のままの1のほうが良さそうです.

室屋さんによれば,いずれ英語版を出すとのことです.




NSやNBhは,大して細かく考えていません.

太郎の主張を花子がちゃんと受け止めて繰り返せないと負け,みたいな感じです.

NVになると,色々と議論があったようです.

花子が反論するなら,別に,綺麗にまるごと太郎の言ってることをそのまま繰り返す必要はないだろう,花子が反論する際に太郎の主張については取り上げることになるから,どのみち繰り返していることになるじゃないか,反論しているのに繰り返さないということは,そもそもありえないだろう,というような意識です.

ウッディヨータカラも相当な暇人です.

さらに,このNSTDになると,また,ダルマキールティまで考慮して,色々と凝ったことを言っています.

さらに,ヴァーチャスパティが,その上を行く,というような発展を遂げています.

一つのスートラを扱うだけで,インド哲学史上の高峰群を縦走しなければならないことになってしまいます.

このNSTDは,高峰として有名ではありませんが,興趣に富んでいるという点では,マニアックな沢登りといった感じでしょうか.

山あり谷あり,インド哲学史の研究者は大変です.
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  1. 2014/05/14(水) 08:10:49|
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