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Pratibhanusarini --- 九州インド哲学ブログ2

On Indian Philosophy and Buddhist Studies

四国遍路日記の紹介:青野貴芳著『四国巡礼葛藤記:駆け出し僧侶が歩いた四国八十八ヵ所』


四国巡礼葛藤記―駆け出し僧侶が歩いた四国八十八カ所
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青野貴芳
『四国巡礼葛藤記:駆け出し僧侶が歩いた四国八十八ヵ所』(すずき出版)1700円.

著者の青野さんは,東大印哲で博士課程まで進まれたインド哲学の専門家です.

なかでも神への熱烈な帰依・信愛を説くバクティ思想を研究してこられました.

書斎に籠る青白きインテリかと思いきや,大学時代は柔道部に所属.

かなりの武闘派(?)です.

同時に,現役の僧侶(禅僧)でいらっしゃいます.

本書は,永平寺,そして,古刹である宝慶寺での厳しい修行(安居あんご)を終えられた青野さんが,「今しかない」と思い立たれて四国八十八ヵ所を歩かれた日記です.

もとは東京大学仏教青年会『仏教文化』に連載された寄稿文に加筆したものです.

2001年4月から5月にかけて歩かれたので,著者は当時31歳.

しかも全行程,基本的に托鉢されて歩いたとのことです.

一番札所霊山寺(りょうぜんじ)から順に時計回りで回る「順打ち」に付き合うことで,読者も一緒に遍路を体験できる仕掛けになっています.

遍路での様々な約束事や,遍路界の(表・裏)様々な情報が,読み進めるうちに自然に頭に入ってきます.

著者の観察とユーモアは,八十八ヵ所に付き合う読者を疲れさせません.

この文才は羨ましい限りです.


%%%%%%%%%%%%%%%%184-185頁より引用%%%%%%%%%%%

「あの,お車いかがですか」

車から若い男性が降りてきてそう言った.

「いやあ,申し訳ありませんが,歩きなんで・・・・・・」

「そうですか.じゃあ,ちょっと待ってください」

男性は,車の中に上半身を突っ込んで,何やら探しているようであった.

「これ,持っていってください」

男性は,菓子パンをいくつかくださった.感謝.その方は,にこにこして物腰が柔らかく,見ただけで,「いい人だなあ」と思わせるような方だった.自身を振り返ってみるに,やれ修行だ坐禅だと言っているわりに,この方のように,他人に幸福感を与えられるような人柄ができていない.宗教者は,奇跡を起こしたり霊が見えたりするような特別な能力ではなく,まずもって人格の練磨が必要であろう.大学の近くに「リヴ・イン・ラブ」というスナックがあったが,その屋号の精神が大切だ.

%%%%%%%%%%%%%%%%%%%引用終わり%%%%%%%%%%%%%%%


仏教用語・禅語の解説から,八十八ヵ所で通る街や山川の描写まで,超俗と世俗を軽やかに往復します.

連載当時,仏教青年会理事だった上村勝彦先生(東京大学教授)も絶賛しておられたとのこと.

各章の末尾に付された注には,突っ込んだ情報も盛り込まれています.

遍路だけでなく仏教の基礎知識や常識を押さえておくにも便利です.





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  1. 2006/12/27(水) 08:13:15|
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