Pratibhanusarini --- 九州インド哲学ブログ2

On Indian Philosophy and Buddhist Studies

福岡の南印料理事情

Ammaa 001


九大OGの記者さんが訪問.

最近の福岡に於ける南インド料理の「流行」について.

どれほど店を回っているのかと逆質問したところ,ゼリージュ,ポラポラ,106,それに,隠し球でちゃんと〇〇〇まで回っていました.

中間の番長も電話取材したとのこと.

ちゃんと研究されているのにまずは感心.

東京の事情も,ダバインディアも含め,それなりに予習されてきたようでした.

しかし,大阪事情,さらには,福岡・九州におけるスリランカ料理の特殊な状況,さらに,スパイスロードをはじめとしたスパイスカレー事情については,まだ暗いという様子でした.

ましてや,最近のビリヤニ事情については,まったくノーマークの様子でした.

もちろん,マルハバやザエカの名前はご存じなかったようです.

リッチでクリーミーなカレーにナンを一つの特徴とする北インド系のレストラン料理(宮廷料理というか,福岡の場合,安い出来合ソースの亜流の化学調味料たっぷりのお手軽安価カレーにナン食べ放題)にたいして,野菜に米の健康的な,腹一杯になっても腹もたれしないヴェジタリアン・ミールスを一つの典型とする南インド料理.

その間には結構な開きが実はあります.

その間を埋めるものとして,福岡では,米のカレーである,ツナパハを始めとするスリランカ料理屋の存在,そして,日本人が工夫したスパイスカレーの存在(スパイスロードを一つの典型とする)を抜きにすることはできないでしょう.

おおざっぱに言えば,

1.ナン:北インド風
2.米:スリランカ風,日本人のスパイスカレー
3.米:南インド風

という発展段階を考えるべきだ,ということです.

一足飛びに1→3,すなわち,北インドから南インドの直結を考えるのは,福岡の場合はあてはまらないのではないか,ということです.

そこに,

4.東京での南インド料理屋の成功,

さらには,

5.大阪に於けるスパイスカレー(合い掛けに典型的なスリランカ料理も含む)の隆盛,

という二つの影響を加味することになります.

2それ自体を5の影響(5→2)と見てもいいでしょうし,あるいは,同時平行で3をもたらした((2+5)→3)と,いずれと見るかは意見の分かれるところでしょうが,スパイスロードは,直接には大阪を参照しているわけではないので,前者の方が穏当な見方でしょう.

また,ツナパハ・ヌワラエリアの成功は,大阪とは無関係であるということも,前者の見方を支持することになります.

まとめると次のような感じです.
     
   4  
    ↘
1→2→3
    ↗
   5   

主軸としては,北インドのナンカレーから,米で食べるカレーの工夫・受容を経て,ようやく南インドのヴェジミールスを受け入れる素地が福岡の人に準備され,そこに,南インドが流行っている東京と,米で食べるスパイスカレーの大阪の影響がある,というような構図になるでしょうか.

本格的な南インド料理にこだわった「あんまー」が福岡にひとつの流れを作り出せなかったのは,まだ,1から2への中途段階,あるいは,それ以前の1の段階にあったからだと考えられます.

もちろん,細かいことを言い出せば,給食カレーやボンカレーのような従来の「和食」の一部となったカレーライスや,あるいは,欧風カレーというようなことも考えねばなりませんが,それは,主要因として考える必要はないと思います.いれたければ,ゼロ0として,1の前提に立てれば良いだけです.

また,タージ,サリー,グローリーといった古くからの例外的な存在も考える必要はありますが,いずれも,1あるいは2の範囲で処理できるでしょう.

スパイスカレーは,カレーライスの延長線上にあるとはいえ,北インド料理の流行ということを抜きにして,一足飛びに,カレーライスからスパイスカレーを結びつけるのは乱暴でしょう.

スパイスの量的な多寡の違いが明白にあります.

お子ちゃまは,カレーライスは食べるけど,スパイスカレーは食べられません.

したがって,0→1→2という発展段階を考えるのが妥当ということになります.

また,スリランカ料理が2に入るというのは重要です.

ダシの効いていないヴェジミールスを楽しんで食べるのは,日本人には,いきなりは難しいでしょう.

しかし,カツオダシの効いたスリランカ料理なら,日本人の米食文化には受け入れやすいと言えます.

南インドに近く,しかも,カツオダシの効いたスリランカ料理でワンクッション入れることで,すんなりとダシの効いてないタミル食を受け入れる素地もできてきた,ということです.

その他,ヨーガ(例えばマイソールのアシュタアンガヨーガのクラスなどに短期留学する人)や,菜食などの健康ブームということも,周辺状況としては南インドの菜食を後押しする要因となったとは言えますが,主要因とまで言う必要はないでしょう.

さて,では,ビリヤニのような肉のうまみがある炊き込みご飯は,どのように考えれば良いのか,という疑問も湧いてきます.

これについては,特に,流れを考える必要はないと思います.

ビリヤニ自体は,レストランでは面倒なので出さなかっただけで,もし出していたら,最初から美味しいものとして日本人は受け入れていたでしょう.

これまでは,(そしてインドでも,もしビリヤニ専門店ではなくて,ホテルで注文すればそうですが)粉かけピラフみたいな簡易ヴァージョンしか出されていなかったので,これまで知られていなかっただけ,ということが言えると思います.

肉の旨味というのは,まあ,好きな人は好きなので,パキスタン料理に関しては,1の北インドの範囲内で考えるべきであり,ビリヤニも,単にその中での発展・拡張と見なすべきでしょう.

北インドの家庭料理(例えば熊本のインド食堂)に関しては,かなり例外的な事象なので発展段階をどう見るかという難しさはあります.

しかし,段階としては最終段階にあたるので,3と同時並行あるいは付随事象,あるいは,3の後にくる段階として立てた方がいいかもしれません.

どまどま流通センター店で一時的に出していたネパール料理の酒に合うつまみ系のものとかは,結構な最終形態として別立てしたくなります.

しかし,家庭料理と言うことになると,最終的には,レストランで食べる必要がなくなってくる,ということになります.

つまり,普通に日本の家庭でも印度家庭料理のレシピ―が増えてくる,という事象につながっていくことになるでしょう.

amma 003

カレーの辛島先生(東洋史)が解説をしていたころ日本で流行っていたのは北インド風のレストラン料理だけでした.

しかし,アジャンタも本当は出身はタミルです.

20年以上前,インド旅行をしていたとき,マドラスでギータさんという日本人のお婆さんの家を訪問したことがあります.

彼女が結婚したインド人を介して,アジャンタとは親戚関係にあるとのことでした.

息子さん(顔は完全にインド人)とも(英語で)話をしました.

日本に帰ってアジャンタにも行きましたが,いかんせん,学生には高すぎる店でした.

麹町のアジャンタ,結局,数回しか行けませんでした.

しかし,その後,日本は価格破壊の時代.

インド料理屋も,それまでは高級店で一回行けば2500円以上は絶対するという価格帯から,一気に,夜でも1500円で食べられるし,昼のランチなら,1000円以内で食べられるという時代に変化していきました.

サムラートも昔は高級風の店作りだったのに,渋谷にいきなり格安の店を出すようになったのには驚いたものです.

その後は,ご存じのように,格安のインド料理店が雨後の竹の子のようにチェーン展開していきましたし,その流れは,都内の中心地だけでなく,郊外にも広がっていきました.

南インド留学から帰ってきた当初,南インド料理といえば,何もありませんでした.

カレーリーフができたときは嬉しくて結構かよいました.

最初は客が少なくて(何も言われませんでしたけど客数から見ると明らかに)苦労されていたようです.

一度は,ネットで,「一ヶ月に一度は来てくれると助かります」というような泣き言も書いているのを見たことがあります.

ネガティブ発言を反省されたのでしょうか,すぐに消されていましたが,やはり,受け入れられる前の苦労というのは並大抵ではなかったのでしょう.

当初,南インドの米食(日本国産,特に,福島の米)へのこだわりで,「ナンには合いません」というような姿勢だったのが,いかんせん,ナンを求める客の要望に抗しきれなかったのか,あるいは,経営的にナンを置くのも仕方なしと判断されたのか,ナンも黙って出すようになっていました.

その後,ダバインディアやダルマサーガルがど真ん中で成功.

アジャンタ系のAラージは,立地的にはど真ん中ではありませんが,物好きな人は早速チェックしていました.

そして,働いていたコックさんたちが独立して,さらに,南インド料理を各地に普及.

同時に,周辺では,レストランがないなら自分らで作ろうという流れがグルジリ,さらには,マサラワーラーなどで拡散.

福岡にも,アジ美にはマサラワーラーが来てくれましたし,また,グルジリの流れを汲むトラさんの会が,既に,何回も催されています.

レストラン以外の周辺状況,つまり,ないなら自分らで,という流れも,福岡の場合,重要な要素として,つまり,6として別個に考える必要があるでしょう.

Amma 008

写真はいずれも「あんまー」の初代のコックさん(2009~2010)の料理.

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  1. 2015/11/19(木) 22:06:05|
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