Pratibhanusarini --- 九州インド哲学ブログ2

On Indian Philosophy and Buddhist Studies

received: 龍樹『根本中頌』を読む

ChuronKatsuraGoshima.jpg

桂紹隆・五島清隆
龍樹『根本中頌』を読む
春秋社
3400+税
2016/10/20




翻訳編(桂)と解説編(五島)からなる本著.

帯には

『中論』の画期的な現代語訳

と銘打っています.まさにその通りの本です.

これまでは,サンスクリット原典から見ると,いまひとつな和訳しかなかったのですが,最新の研究成果を踏まえて,サンスクリットから信頼できる和訳が出た,ということです.

宇井・中村・平川・三枝・渡辺という東大印哲の錚々たる諸先輩方が,個々に取り組んできた中論ですが,サンスクリットからの信頼できる訳という観点から見ると,首をかしげざるを得ないものばかりでした.

漢文にどうしても引きずられるということはあるのでしょう.(鳩摩羅什の訳が素晴らしいので,それはそれで,或る意味,当然かもしれませんが.)

既に英訳に,Siderits & Katsuraの信頼できるものが出版されていました.それのいわば日本語版ということになります.

さらに,五島氏による,優れた解説が付されています.

結局の所,龍樹は何を説いていたのか,ということに関しても,これまでの研究を踏まえて十分に論点を整理してくれています.

今後,恣意的な読みに基づいた自分勝手な思い込みを「龍樹のもの」と付託する行為は,すこしは減少するでしょう.(別に,龍樹からヒントを得て,自分の信条を勝手に吐露するのは,各人の自由ですが.)

本書のおかげで,講義などで一般学生向けに使うのにも,至極便利になりました.

また,龍樹理解の前提となる実在論,つまり,龍樹が批判対象とする見解についても,詳しく解説を施しています.

敵の姿を捉えないことには,龍樹のやろうとしていたことも理解できません.

その点,本著の解説は,十分な配慮をもって構成されています.

龍樹の用いる論法についても,非常にきれいに整理してくれています.

これを分かってから読むのと,そうでないのとでは大違い.

無用な混乱に陥ることなく,龍樹に立ち向かうためには必携のガイド本です.




まえがき(桂紹隆)
龍樹『根本中頌』(ムーラ・マドゥヤマカ・カーリカー)翻訳編(桂紹隆)
龍樹『根本中頌』(ムーラ・マドゥヤマカ・カーリカー)解説編(五島清隆)
 第一章 龍樹(ナーガールジュナ)の思想
  一 『根本中頌』の構成
  二 龍樹の実在論批判
  三 帰敬偈――『根本中頌』作成の目的
  四 龍樹の仏陀観
  五 『根本中頌』の縁起と「相互依存の縁起」
 第二章 龍樹の著作
 第三章 龍樹の生涯

解説編で引用,説明される偈頌一覧
参考文献
あとがき(五島清隆)




手っ取り早く「龍樹の思想」を知りたいという向きは,第一章・五から読み始めると良いでしょう.そこに先行研究も要領よくまとめられています.
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  1. 2016/11/03(木) 08:10:51|
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