Pratibhanusarini --- 九州インド哲学ブログ2

On Indian Philosophy and Buddhist Studies

仙人と魚臭い女

DSC00895.jpg

ドミニクが現在取り組んでいるのが,カンボジアのサンスクリット語碑文.

つい最近,同僚が発見した貴重な石碑に彫り込まれた碑文を解読中.

拓本や写真だけでなく,山奥の現地も訪れ,実際に,何度か読み直しています.

ポンディでは,写真をなぞりながら,何度も原文(韻文)の再構成,および,仏訳作成.

ところどころ石が削れて見えないところは,原文のサンスクリットの内容から,ありそうな語を想定し,それが可能かどうかをいまいちど写真に照らして石の上に確認します.

韻律に基づいたパズル解きのような作業です.

さて,ある詩節.

パラーシャラという仙人の名前がはっきりと見えます.

そして,remeという完了形.どうやら,仙人さん,「楽しんだ」「享受した」ようです.

そして,あとは,「戦場の塵」という単語.

さらに,「ジャヤシュリー」という戦勝の女神.

これだけで,どうやら,クメールの王様が,戦場でもうもうと砂煙を上げて戦い,戦勝の女神を享受した,ということが分かります.

問題は比喩のソースになっているパラーシャラです.

ヒントからすると,「パラーシャラがXを楽しんだのと同様に,王様はジャヤシュリー女神を楽しんだ」という構造になるはずです.

しかし,石碑の写真それ自体からは,ところどころ切れ切れに文字は読めるものの,単語レベルでは不明瞭なままです.

さて,パラーシャラが女を楽しんだといえば,彼がヤムナー川を渡るときのこと.

魚臭いサティヤヴァティー=ガンダヴァティーという漁師(川船頭)の娘と契りを交わしたときのことです.

そのとき,パラーシャラは,恥ずかしかったので,神通力で霧を発生させて真っ暗にして交わったとのこと.

これが,あの塵と対応する箇所でした.

そして,石碑には,「正しい人々への恥ずかしさが故に」という二単語も見えます.

これではっきりしました.

「かつてパラーシャラが,正しい人々への恥ずかしさが故に,霧を立ててから,ガンダヴァティーをたのしんだように,いま,この王は,戦場の塵を立てて,戦勝の女神ジャヤシュリーをたのしんだ」という趣意となります.

カンボジアの歴史研究・碑文研究も,このような地味な作業に支えられて,一歩ずつ進んでいくことでしょう.

そのような高尚な目標はさておいても,なんともお茶目な詩節です.

ポンディのパン屋さん「ベーカーストリート」で,カンボジアの貴重な歴史の一コマを解いているとは誰も思わないでしょう.
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  1. 2017/02/27(月) 19:26:37|
  2. 未分類

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