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Pratibhanusarini --- 九州インド哲学ブログ2

On Indian Philosophy and Buddhist Studies

桂研

ハリバドラのAAA。

唯識批判の箇所に登場する一論者。

形象真実論を標榜する一論者です。

多数の形象と一認識のチトラアドヴァイタではなく、多数の認識に多数の形象で、現象の多様性を説明しようとします。

つまり、同時に多数の認識が生起することで、多様な青などの現れがあるというのです。

この説に対してハリバドラは、まず、極微批判のロジックを転用して批判します。

すなわち、生起するとされる一つ一つの認識も実有である以上、空間的な広がりを取るはずだと考え、極微批判に対するのと同じ批判が当てはまる、と考えるのです。

唯識において当然、認識は実有、しかも、この論者は形象真実論に立ちますから、当然、形象も真実、つまり、客観的に存在するはずです。

極微Aが極微Bと向き合うとき、果たして、その同じ自性をもって極微Cにも向き合うのか、あるいは、別の自性をもってか云々。

極微の集積が成り立たないのと同じく、原子としての一々の認識の集積も成り立ち得ないはずだ、というのが、ハリバドラの議論です。

至極真っ当な批判です。

これに対してこの多認識多形象の形象真実論者は、「いやいや、物質であり有形である極微と違って、認識は非物質・無形であり広がりをそもそも持たないので、上の批判は当たらない」と反論してきます。

この反駁方法は不当に映ります。

というのも、この論者は唯識論者、しかも、形象真実論者であり、多数の認識と多数の形象が同時に存在すると考えているからです。

結局この論者は矛盾したことを主張していることになります。

認識は空間的な広がりを持たないにもかかわらず、なおかつ、空間的な広がりを持つ、と。

もしも、多数の認識が空間的な広がりを持たないままに、空間的な広がりを持つかに見える多数の形象を表し出すと言うのならば、空間的な広がりを持たないのですから、導入するのは一認識でもよかったはずです。

そもそも、この論者は形象真実論者ですから、多形象が実有として空間的に広がっていることを認めるのならば、多認識も空間的に広がって生起し存在することを認めねばならないのです。

ここだけ都合良く「認識は非物質だから広がりを持たない」ということはできないのです。

広がりを持たないなら多ではなく一認識で用が済むからです。

多数の形象が真実であるというとき、その多数の形象は、当然、空間的に広がりを持つものであり、それ以外ではあり得ません。

そして、多数の形象と同様に、多数の認識も、それが真実であるならば、空間的な広がりをもって存在せねばなりません。

したがって、「認識は非物質で無形だから」という反論方法は、この論者には最初から許されてないのです。




参加者は,龍大・谷大の若手のほか,唯識中観世界の大御所,桂・沖・一郷というトリプルスリーの大先輩方.

梶山・服部・大地原の三聖人が揃っていた,かつての京大黄金時代を大学で過ごした方々です.

「こうちゃうか」「いや,そうではないと思います」云々,当時を彷彿とさせる議論の丁々発止.

わたしの上の見解は沖先生と同じもの,いっぽう桂先生は,これとは少し違う解釈でした.

まさに同時に多様な認識が生起併存する世界,あるいは,他相続の激突.

それらが一如に融け合った華厳世界かどうかは定かではありませんが.

夕方5時にはじまって,えらい遅くまでやっていました.

最後は頭真っ白,形象を空じて能取も空じ,唯心の境地に.

にしても,この世代の研究熱とパワー,恐るべしです.




問題箇所の原文は以下.

Q: nanv amūrtatvāj jñānānāṃ na deśakṛtaṃ paurvāparyam asti.
tat katham aṇuvan madhyavartitvaṃ jñānānāṃ bhavet.

A: satyam etat.
ayam aparo 'sya doṣo 'stu yad
deśavitānapratibhāsinām ākārāṇāṃ satyatvam icchatā
(1) jñānānām adeśānām api satāṃ
(2) bahūnāṃ tathādeśavitānotpādaḥ
parikalpyate.

anyathā hi
yady
(1) anekavijñānotpādakalpanāyām api
(2) tathādeśavitānotpādapratibhāso mithyā syāt,
tadā
(3) anekavijñānotpādakalpanā vyarthaiva syāt.

na ca
(1) deśavitānāvasthitanīlādipratibhāsam antareṇa
(2) anyan nīlādy anubhūyate
(3) yat satyaṃ bhavet.

tasya cālīkatve kim anyat satyaṃ bhaviṣyati

--- iti yatkiṃcid etat.
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  1. 2017/11/22(水) 15:38:18|
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