FC2ブログ

Pratibhanusarini --- 九州インド哲学ブログ2

On Indian Philosophy and Buddhist Studies

シャーストラにおける文体



文学においては文体,つまり,スタイルの違いが正面から云々されますが,哲学神学論書などのシャーストラにおいても,実際には,時代により,あるいは,ひょっとすると場所により,また,伝統により,文体というものはかなり違います.

たとえばカシミールによく見られるスタイルなどというのもあります.

私の場合,シャバラからはいったので,彼が模倣する『マハーバーシャ』流の古い文体が体にしみこんでいるので,当初より文体の幅が広がったのは幸いでした.

あれが,後代の『マーナメーヨーダヤ』やら『タルカサングラハディーピカー』だけから入ったなら,あとあと苦労することになったでしょう.

とくに,iti句の後付けなどは,シャバラでは普通ですが,後代になると,現代感覚と同じで前に持ってくることのほうが多い気がします.

古い文体を踏襲する作品にエディターが慣れていないと,句読点(つまりダンダなど)の打ち方で,よく,間違っているのを目にします.

こういうのは訓練で身に付く感覚ですから,最初に癖がつくと,なかなかその頭から逃れられないものです.

マックからウィンドウズに切り替えるような頭の切り替えが必要です.

シャバラとクマーリラを読み比べれば,文体の違いというのはすぐに分かります.

プラバーカラは,また,これはこれで独特な文体で,慣れるのに苦労します.

講義で喋っているのをそのまま録音して起こしたような文体ですから,その場にいないと,いったい,どう話者が切り替わっているのか,声色のヒントもないので,困ってしまいますが,幸い,マドラスのエディターが凄腕なので,ちゃんと区切ってくれています.

落語を改行なしにずらずらと書かれたら,いま誰が喋っているのか理解するのに苦労するでしょう.

区切りだけでエディターのすごさがわかります.

ジネーンドラブッディ自身は,後代のひとなので,十分に普通の文体なのですが,といっても古いスタイルを未だ残すディグナーガへの註釈ですし,また,文法家でもありますから,若干,古い形式を保っているところがあります.

彼は彼で,彼のスタイルに慣れる必要があります.

とくに,見出し語というか,引用句の頭であるプラティーカを引く字句註釈の場合,いったい,何について語っているのか,もとの文と引き比べて見ないと読者としては迷ってしまうことになります.

何について喋っているのか,判断の主体はディグナーガなのか,あるいは,ジネーンドラブッディなのか,ということです.

幸い,復復註とかではなく,註釈なので,そこまでややこしくないですが,とはいえ,これが,マーダヴァなどの,ディグナーガの論敵も入り乱れてくると困ってしまいます.

いったい,これは,マーダヴァをディグナーガが引いているのをジネーンドラがマーダヴァになりきって解説しているのか,なんなのか,云々.

誰が喋っているのか,誰の意図を誰が解説しているのか,透明のガラスを何枚も透過して向こうを見るようなもので,いったい,どこを光がとおっているのか,対象(内容)は見えても,途中の経過が見えないことがあります.

青の認識と「青」という認識の違いのようなもので,さらにややこしいことに,「「青」という認識」という認識,まである,といった具合です.

というわけで,600年以降ばっかり読んでいると,文体への準備幅が狭くなるということでした.

逆に,それ以前ばかり読んでいても,後代のシャーストラらしい文体に不慣れになって,拒絶反応を起こしてしまうことでしょう.

明晰さと簡潔さを追求する,いかにもの哲学者らしいマンダナ,ウダヤナあたりは,非常にドライな文体です.

『ニヤーヤ経疏』を書いたヴァーツヤーヤナも,自分への復復註のウダヤナ作品を読んだら「むずかしい言い方するなー」と漏らしたことでしょう.

シャーストラの各種文体になれる教科書としては,様々な文体を総合した感のあるジャヤンタの『ニヤーヤマンジャリー』がやはりお勧めです.

韻律も各種用いてますし,あちこちに,音装飾まであります.

マンダナのように論理ドライになりすぎることもないので,喉が渇くこともありません.

戯曲風もあり,飽きない仕組みが各種用意されています.

やはり,教養ある作者のものを読むのが一番です.

古の学者の底深さというものは,やはり,すごいものがあります.

ここらへんの奥深さの違いというのは,たとえば,ウンベーカ(700年頃)とスチャリタ(900年頃)にもあります.

クマーリラへの註釈である両者を読み比べると,その威厳というか,たたずまいの違いというものを意識させられます.

分かりやすいからスチャリタのほうが好きという人が多数でしょうが,わたしは,圧倒的にウンベーカが好きです.

スチャリタあたりになると,現代人と同じ感覚なのかなという気がして,教養の底が見える気がします.
スポンサーサイト



  1. 2019/08/27(火) 19:42:13|
  2. 未分類

プロフィール

Aghora

Author:Aghora

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する